相談と回答「契約終了、心のケアはどう対処してくれるのでしょうか?」|派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください|派遣労働者の皆様へのアンケート
派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください

お寄せいただいたご相談と弁護士による回答をご紹介します

Q.

約4年半ずっと更新し続けてきましたが、派遣法により6月いっぱいで契約終了となってしまいました。

長年勤めて切られ、急に生活も環境も変わることになった心のケアはどう対処してくれるのでしょうか。

派遣法により続けるか辞めるかは3年以上勤めた場合はこちらに主導権を与えるべきではないでしょうか。

上記で述べた派遣法により長年勤めた会社を契約終了となった方への慰謝料的なものはないのでしょうか。

回答日:2018/06/26

以下、質問者様を回答の便宜上「Aさん」と呼んで回答いたします。

また、Aさんのご質問を、

(1)長年勤めて切られてしまい、急に生活も環境も変わることになった心のケアは?

(2)3年以上勤めた場合、派遣先での勤務を続けるかどうかは労働者に主導権を与えるべきではないか?

(3)派遣法により長年勤めた会社を契約終了となった場合、慰謝料は発生しないのか?

の3つの質問にわけて回答いたします。

<質問(1)への回答>
現行法は心のケアに対する配慮がなされておらず、私たちも憤りを感じています。それを前提に、不十分ながらAさんの心のケアに繋がる可能性がある方策としては派遣元の会社に対して、「雇用安定化措置」をとることを求めることが考えられますので、ご紹介します。

例えば、派遣元の会社を通じて、派遣先の会社に対してAさんを直接雇用(派遣社員ではなく)するよう依頼することや、派遣元の会社に対して無期雇用することなどを求めることができます。

ただし、Aさんのケースでは、派遣先の会社はもとより、派遣元の会社も、Aさんの求めに従わなければならない法的な義務まではなく、努力義務が課されるにとどまるものと考えられます。

とはいえ、努力義務というのは何もしなくてよいというものではありませんので、諦めずに雇用安定化措置をとるよう求めることが大切です。

詳しくは、『ここが知りたい! 改正派遣法Q&A』Q03-3(8頁以下)( http://www.hiseiki.jp/file/hakenhouqanda-1607.pdf )をご覧下さい。

先に述べたように、派遣先がこの依頼を拒否する自由もあるので、依頼の仕方などに工夫が必要ですし、期間制限を迎える少し前に予め働きかける必要もあります。ですから、雇用安定化措置を求めたい場合には、あらためてご相談下さい。

<質問(2)への回答>
ご指摘の通りですね。派遣先や派遣会社に主導権を与える現行の派遣法には大いに問題があるという前提で、Aさんのケースで活用の余地がある、現行法上可能な限りの対策をお伝えします。

2015年に改正された現行の派遣法では、いわゆる3年の期間制限に違反して、3年以上同じ派遣先会社の同じ課やグループなどで派遣労働者を勤務させた場合には、派遣先での勤務を続けるかどうか、労働者に主導権を与える制度ができました。

これを、「直接雇用契約の申し込みみなし制度」といいます。

もっとも、この3年の期間制限を、いつから数えて3年とするかというと、2015年9月30日以降に締結された契約の日から3年ということになりますので、残念ながらAさんのケースでは、この制度の利用は難しいということになります。

今後のためにも、3年の期間制限のルールや、直接雇用契約の申し込みみなし制度について詳しくお知りになりたい場合は、『ここが知りたい! 改正派遣法Q&A』Q2‐1以下(2頁以下)、Q5‐1以下(15頁以下)( http://www.hiseiki.jp/file/hakenhouqanda-1607.pdf )をご覧下さい。

<質問(3)への回答>

契約終了の原因によっても変わってくるところですが、Aさんのご質問の趣旨を踏まえ、派遣法により定められた派遣可能期間を超えて、同じ派遣先の同じ課やグループなどで勤務していたにもかかわらず、派遣先が派遣を打ち切った場合に慰謝料を請求することができるか、というケースを前提として回答します。

このようなケースでは、派遣先に対して、慰謝料等の損害賠償を請求することも考えらます(ただし残念ですが、この種の請求に対して請求を認めないという否定的な判断をした裁判例が複数存在しており、断定的な予測はお伝えし難いのが現状です)。

このようなケースで、慰謝料等の損害賠償請求を認めた判例として、パナソニックエコシステムズ事(名古屋高裁平成24年2月10日、最高裁で確定)があります。

この判例では、雇用の継続性において不安定な地位に置かれている派遣労働者に対し、その勤労生活を著しく脅かすような著しく信義にもとる行為が認められるときには、派遣先会社は派遣労働者に対し、損害賠償責任を負うとして、当該事案において慰謝料の支払いを認めています。

したがって、派遣可能期間を超えて派遣労働者を使用した派遣先会社が、その派遣労働者の契約を打ち切ることが、派遣労働者の勤労生活を著しく脅かすような著しく信義に反するものであると認められる場合には、派遣労働者は派遣先会社に対して慰謝料等の損害賠償請求をすることが認められることになると考えられます。

もっとも、この裁判例においても、単に派遣法で定められた派遣可能期間の制限に違反していたことのみをもって慰謝料支払いを認めているわけではなく、他の様々な事情も前提としていることには注意が必要です。

また、慰謝料を請求するにしても、その手段として必ずしも(一般の方には敷居が高い)裁判所を通じての解決だけではなく、労働組合を通じての団体交渉による解決なども有力な選択肢となります。具体的な方法については、直接のご相談をお勧めします。

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