相談と回答「雇い止めで契約が更新できないと無期転換できないのでしょうか?」|派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください|派遣労働者の皆様へのアンケート
派遣法改正から3年・あなたの“今”をお聞かせください

お寄せいただいたご相談と弁護士による回答をご紹介します

Q.

派遣元からハッキリとは言われていませんが、無期転換するタイミングは契約更新の時にと言うニュアンスで話されます。

また、本日私の契約更新が次回(8月末)ですら危ぶまれる状態であることが派遣元の担当から告げられました。

前回面談したときには「11月末で雇い止めのようだ」とのこと。また、「今回の更新(6月から8月)では無期転換しても意味がないので今のままで行きましょう」と言われまだ無期転換していません。

無期転換の権利はすでに得ています。この場合でも次回雇い止めで契約が更新できないと無期転換できないのでしょうか? それとも言うタイミングはいつでも大丈夫なのでしょうか?

回答日:2018/07/12

平成25年4月1日に労働契約法が改正され、有期雇用契約の無期転換の制度が始まりました(労働契約法18条)。

この無期転換とは、期間の定めのある雇用契約によって雇われている労働者が、同じ雇用主(今回であれば派遣元)との間で、通算して5年を超えて契約を更新している場合に、現在の契約期間が満了する前に雇用主に対して無期雇用契約の締結の申し込みをすると、雇用主がその申し込みを承諾したものとみなされ、無期の雇用契約が成立するという制度です。

無期になった雇用契約は、現在の雇用契約の期間満了の次の日からスタートし、契約期間以外の労働条件は従前のままで変わりません。

この「通算して5年」という期間は、平成25年4月1日以降の最初の更新のときからカウントされます。

ご質問の文章からは、相談者様は3ヶ月ごとに契約を更新していると思われますので、平成25年から同じペースで(平成25年3月~5月、6月~8月、9月~11月…)更新を繰り返してきたと仮定してご説明します。

平成25年4月1日以降に最初に更新された契約は、平成25年6月1日に始まったと推測されます。そうすると、平成30年6月1日をもって雇用期間の通算が5年を超えることとなりますので、現在の契約の期間満了日(8月末日)までに派遣元に対して無期雇用契約の締結を申し込めば、無期雇用契約が成立します。

この無期雇用契約は9月1日から始まり、賃金や就業時間等の条件は、現在の契約と同じままです。

ご注意いただきたいのは、無期転換の権利があったとしても、雇用主との間の雇用契約が存在している間しかその権利は行使できないということです。更新されないまま契約期間が満了してしまうと、満了後に無期雇用契約の締結を申込むことはできません。

相談者様の場合、今年の8月末日の期間満了までに無期雇用契約の申込みをせず、さらに契約の更新もされなかった場合には、もはや無期雇用契約の申込みはできなくなってしまいます。

したがって、相談者におかれましては、ただちに派遣元に対して無期雇用契約の申込みをされることをお勧めします。

ただし、もし相談者様が派遣先に対して直接雇用を求めたいと考えておられるのであれば、以下の点にもご注意ください。

平成27年9月30日に施行された改正労働者派遣法により、派遣先が違法に派遣された労働者を受け入れた場合に、派遣先が派遣労働者に直接雇用の申し込みをしたとみなす制度ができました。

派遣先は同じ派遣労働者を3年を超えて受け入れることはできませんので、3年を超えて同じ派遣先で派遣労働者として働いた場合、上記の申入れ(みなし)を労働者が承諾すれば、派遣先との間で直接雇用が成立するのです。

この3年の期間は、平成27年10月1日以降に最初に更新された派遣契約の始期からカウントされます。

相談者様の場合、法改正後に最初に更新された契約の始期は平成27年12月1日であったと思われるので、仮に平成30年11月末日を超えて現在の派遣先に派遣され続けたとすれば、平成30年12月1日以降に派遣先に直接雇用を求めることができるようになります。

ところが、派遣元に無期雇用で雇われている派遣労働者には、この期間制限が適用されません。そのため、派遣元に対して無期雇用契約の申込みをして無期転換をすると、上記のみなし規定によって派遣先に直接雇用される可能性はなくなってしまいます。

ですから、もし相談者様が派遣元での無期雇用よりも派遣先での直接雇用を優先したいということであれば、現時点で無期転換権を行使するかどうかは慎重に考える必要があります。

しかし、もし派遣元に対して無期転換を求めずに抵触日を待ったとしても、3年を超えて派遣されなければ直接雇用にはなりません。

契約書に抵触日の記載があると言うことは派遣会社が期間制限を認識しているということですし、派遣元担当者の言動も合わせて考えますと、派遣先が積極的に相談者様の直接雇用を望まない限り、3年を超えて派遣される可能性は低いでしょう。

さらに派遣元で雇止めにあってしまったら、結局無期転換も直雇用も実現しないということになってしまいます。ご自身の優先順位を良く考えてご選択いただければと思いますが、派遣元での無期雇用を望まれるのであれば、早めに決断し、8月末日より前に無期雇用契約の申込みをされたほうがいいと思います。

なお、証拠を残すために、派遣元への無期雇用契約締結の申込みは書面でしていただくことをおすすめします。以下の厚生労働省のホームページにサンプルの書式が載っておりますので、ご参考ください。

http://muki.mhlw.go.jp/overview/part_time_job.html

今後、もし派遣元から雇止めされたり、無期雇用契約の締結を拒否されたりするようなことがありましたら、ご遠慮なく弁護士にご相談ください。

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